連載
「田村通り大山道」を歩く(5)
池 内 淑 皓
 
沼目の大山道標
 大山道はこの先200mで沼目団地入り口信号を左折する。この交差点に大山道の道標が残っている。「右日向道 左大山道」元文四年(1739)巳未歳十二月吉祥日 相州大住郡糟屋荘沼目と読める。
  
 道は住宅街の中を行く。ゆるやかに坂を下り、矢羽沢排水路を越えるとゆるやかに坂を上る。桜台3−8と表示のある電柱を見てY字路を右折、250mで浄土宗九品山善光院三福寺前の交差点に出る。道は交差点前のコンビニ横の細い道を200m程行くと、小田急線の伊勢原駅東口前に到着する。昔の大山道は駅のホームを横切り、反対側に立つ銅製の鳥居前に出るのであるが、今は駅の東西自由通路を通って鳥居前に出よう、大山道は鳥居をくぐり細い路地を抜ける。50m程で賑やかな駅前中央通り商店街に出ると、伊勢原大神宮が見えてくる。



伊勢原駅前の大鳥居 伊勢原大神宮 伊勢原片町の不動堂

このお宮の創建は元和年間(1620〜1625)で、伊勢の国住人山田曾右衛門がこの地に住み着き、開拓地の鎮守として故郷の伊勢神宮を勧請して奉祭したのが由来で、伊勢原の名の起りともなっている。祭神は天照大神、境内には春日神社、稲荷総社も祀られている。(この辺り中世の呼び名は「千手が原」と呼ばれていた)。
 大神宮を過ぎ、国道246号を横切ると、300m程で七沢方面の道を分ける片町の交差点に出る。この交差点右際に不動堂がある。堂内には、火炎を背負った不動明王が口を怒らせてこちらを睨んでいる。

  堂前には道祖神や文化十三年(1816)の手水鉢も置かれている。
 大山道はこの交差点を左折、交差点の案内板に導かれて大山に向かう。ここから道はゆるやかな山道に変わり峰岸、市光工業の前を通り、東名高速道路を潜ると二の鳥居に出る。
伊勢原二の鳥居

 この石鳥居は嘉永四年(1851)十一月建立されたが、大正十二年(1923)の大震災で倒壊、昭和三年再建、そして平成三年七月再建と記述されている。かつては大山道を跨ぐように建立されていたのであろう。鳥居の額束の真上に大山が一段と大きく聳えてきた。 道灌塚前、山王原バス停、石倉橋の信号過ぎると右手から小道が合わさってくる。この細道は、はるか江戸赤坂御門へ向かう矢倉沢往還大山道である。 
 目の前に大きく迫ってきた大山を目指して行けばやがて阿夫利神社に至る。
これから先、大山までの案内は既に会報に連載している「矢倉沢往還大山街道を歩く」に記述したので省略したい。
また道灌塚バス停の交差点を右に400m程歩くと洞昌院、大田道灌の墓、上杉館址等の史跡も多いが、これらも既に「矢倉沢往還大山街道を歩く」の項で紹介してあるので、目を通して頂くと更に中世が面白くなるだろう。
 帰路は石倉橋バス停から伊勢原駅行きに乗れば、20分程で駅に到着する。賑やかに完歩の打ち上げをするのも良し、一人でじっくり街道歩きを振り返るのもまた楽しい。先ほどの駅前大鳥居のあたりに丁度良い居酒屋がある。
                               完(15,06、2007)